1:名無しさん




株式会社ネクステージに対する行政処分について

東海財務局は、本日、株式会社ネクステージ(本社:愛知県名古屋市、法人番号: 3180001067712)に対し、保険業法第 306 条の規定に基づき、下記のとおり、行政処分を行 う旨の命令を発出した。

記 1.
命令の内容

保険業法第 306 条(業務改善命令)に基づく命令

(1)業務の健全かつ適切な運営を確保し、保険契約者の保護を図るため、今般、保険業法 第 305 条第 1 項の規定に基づき実施した立入検査において確認された保険金不正請求 疑義事案を含む不適切事案について全容把握のための調査を実施し、調査結果を踏ま えた真因分析を行った上で、以下を実施すること
① 今回の処分を踏まえた経営責任の所在の明確化
② コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成
③ 適切な保険募集管理態勢の確立
④ 適切な苦情管理態勢及び顧客情報管理態勢の確立
⑤ 上記を着実に実行し、定着を図るための経営管理(ガバナンス)態勢の抜本的 な強化

(2)上記(1)に係る業務の改善計画を、令和7年9月8日(月)までに提出し、ただち に実行すること

(3)上記(2)の改善計画について、3か月毎の進捗及び改善状況を翌月 15 日までに報告すること(初回報告基準日を令和7年 12 月末とする)

 



2.処分の理由

当社は、同業他社における保険金不正請求問題の発覚を受け、令和5年8月、顧客、取 引先及び株主等の関係者への説明のため自主調査を行い、不正請求事案が確認されなか った旨を公表している。その後、同年9月初旬以降、当社における不適切募集や不正請求 に関する報道が続いたことを受け、従業員による自動車保険契約のねつ造など一部事実 であることを認め、その旨を公表している。さらに、同月には主要取引銀行の要請を受け て、外部弁護士による内部調査委員会を設置し、当社事業の適法性、健全性を再検証した。 その結果、同委員会は、同年 10 月に「組織的な関与を含む不正請求事案等は確認されな かった」旨を報告書としてとりまとめている。その上で、当社は、損害保険会社による調 査に適切に対応するとともに、板金修理の見積作成、損害保険会社との協定業務を現場か ら本部の専門性の高い部署に移行するなど、不正請求が発生しにくい体制の構築に取り 組んできたとしている。

しかしながら、今般、保険業法第 305 条第 1 項の規定に基づく立入検査を実施した ところ、以下のような問題が認められた。

・経営陣は、「問題がない」との結論ありきで、調査期間や調査の実施主体など、自主調 査の適切性等に関する事項について、取締役会等で全く検討・議論していないまま、整 備業務を所管する整備本部に調査を実施させている。

・これを受けて、整備本部は、同本部に所属する従業員に調査を行わせているが、統一的 な確認の基準もない中で、これらの従業員は各々の主観に基づいて関係資料を確認し ているため、調査の客観性が担保されておらず、問題がないとの判断を裏付ける証拠も 残していないなど、調査方法が不十分なものとなっている。

・また、整備本部は、調査対象期間や調査対象範囲についての適切な検討を行わないまま、 調査開始時点から直近3か月の案件を対象として調査を開始したものの、当社の板金 修理売上の9割以上を占める外注先工場での修理案件のうち、関係資料が揃っていな いなど不正請求の蓋然性がより高いと考えられる案件を調査対象外とする等、調査対 象が限定的な範囲にとどまっている。

・経営陣は、調査対象期間外に発生した不正請求事案や、修理金額の確定前や保険金の受 取前に発見された不適切事案の存在を把握していたにも関わらず、行為者の処分など 場当たり的な対策にとどまり、全容解明へ向けた伏在調査を行っておらず、真因分析や それに基づく再発防止策の策定も行っていない。

・経営陣は、自主調査実施後に設置された内部調査委員会に対しても、不適切募集や不正 請求に関する報道内容の分析・整理を依頼するにとどまり、不正請求について、対象期 間や範囲を拡大して調査を行うなど、自主調査の不十分な部分を補完するものになっ ておらず、不正請求の全容解明に役立つものとなっていない。

・経営陣は、損害保険会社の調査により、令和6年6月時点で、顧客対応が必要となる可 能性のある不正請求疑義事案を少なくとも 47 件把握していたにもかかわらず、事実確 認のための調査の指示や顧客対応を行っていない。

さらに、当社が構築したとしている不正請求が発生しにくい体制についても、整備本部 は、その実効性を検証していない。その結果、店舗における適切な板金業務を行うための人材や、研修・教育の不足、外注先工場における不適切事案の管理不足等の問題が発生し ているにも関わらず、その状態を放置している。

以上のことから、当社においては、現在でも不正請求事案が多数内在している蓋然性が 高い上に、不正請求の未然防止態勢は不十分であり、今後も不正請求が発生する可能性を 払拭できない。

こうした中、今般の立入検査では、当社における保険代理店としての経営管理態勢、保険募集管理態勢等についても、以下の問題が発生していることが確認された。こうした実 態は、保険業法第 294 条の3第1項に規定する体制整備義務に違反するとともに、特定の 保険商品を推奨販売する際の推奨方針・理由の説明不備については、保険業法第 294 条第 1項及び保険業法施行規則(平成8年大蔵省令第5号)第 227 条の2第3項第4号ハに規 定する情報提供義務に違反するものと認められる。

(1)経営管理態勢(ガバナンス)

当社では、事業の急拡大による従業員の増加に加え、従業員による顧客のクレジット カード窃盗等の犯罪行為やコンプライアンス違反行為が継続的に発生しており、こうし た行為への対応により、保険事業の運営及び管理に人的資源を十分に配分できていない 実態にある。

また、経営陣は、保険事業の重要性を認識しておらず、保険業法等の知見も欠如して いることから、保険事業の根幹となる重要施策を、取締役会や経営会議等ではなく、一 部の役員のみが出席する非公式なミーティングで決定しており、取締役会もこうした実 態を看過している。

このため、以下のように、当社の保険事業に関するガバナンスは機能不全となってお り、その結果、(2)及び(3)の問題等が発生している。

・経営陣は、取締役会において保険事業に関する3線管理態勢等の内部統制の整備及び その実効性について全く議論を行っていない。

・経営陣は、第1線の保険募集人に対する具体的な管理手法を十分に構築しておらず、 適切に保険募集を行っているかについて、確認していない。

・経営陣は、リスク・コンプライアンス統括室及び保険事業に関する管理部署である事 業本部保険課(以下、「保険課」という。)に対して、保険事業に精通した人材を配置す るための十分な対応を行っていない。そのため、これらの部門の不適切募集に対する モニタリング態勢は不十分であり、第2線としての機能を果たしていない。

・経営陣は、内部監査室に対して、保険事業に精通した人材を配置するための十分な対応を行っていない。そのため、内部監査室による監査は、保険事業に関する固有のリ スクに着目したものとなっていない等、重大な欠陥が認められ、第3線としての機能 を果たしていない。

(2)保険募集管理態勢

当社では、上記のとおり、従業員による犯罪行為やコンプライアンス違反行為が継続 的に発生しており、保険募集の観点からも懸念すべき状況となっている。

しかしながら、事業の急拡大により従業員が増加する中、保険課が、保険事業に精通 した人材の不足により、形式的と言わざるを得ない研修を実施するにとどまる等、保険 募集管理態勢には以下のような問題が認められる。

・保険課は、保険募集人に対して、保険募集の根幹となる重要事項説明義務や情報提供 義務について教育するに当たり、こうした規制が課せられている目的・背景や違反し た場合に顧客が被る被害等を説明していない。このため、今般の立入検査において、顧客に対して、重要事項説明を網羅的に行っていない保険募集人や、推奨保険会社・ 商品を推奨する理由を説明していない保険募集人が確認されている。

・また、保険募集管理責任者である事業本部長は、新規店舗の出店における推奨保険会 社について、損害保険会社からの本業支援の内容や店舗全体における損害保険会社 の指定割合のバランスを理由に決定しているが、その際、経営会議等への報告・議論 を行わないまま一部の役員間のみで意思決定を行っている。

・そのため、保険募集人が推奨保険会社・商品を推奨する理由について説明していない 事例が認められている上、説明している場合においても、新規店舗においては、上記 の選定理由とは異なる「推奨販売方針・勧誘方針」に記載された各店舗一律の選定理 由を説明している。

・保険課は、保険事業に精通した人材の不足により、コンプライアンス関連情報の分析 を行っていないほか、不適切募集を検知するために必要なモニタリングを行っていな い。

(3)その他

・当社における個人情報保護の責任者である取締役及び関係各部署は、「金融分野におけ る個人情報保護に関するガイドライン」及び「金融分野における個人情報保護に関す るガイドラインの安全管理措置等についての実務指針」の存在を認知していないため、 ガイドライン等で求められている各種安全管理措置を講じていない。

・経営陣は、苦情の再発防止策の検討等を行う部署として、令和6年3月に社長直轄の CS向上推進室を設置しているが、同室が保険事業に関する苦情への対応に全く関 与していない実態や、お客様相談室や保険課等の本社部門がその機能を十分に発揮 していない実態を看過している。