1:名無しさん




騒音を直接的に規制できる法律は、実はひとつしかありません。それが「騒音規制法」です。ただし、この法律が対象としているのは意外と限定的で、工場騒音と建設工事騒音に限られています。自動車騒音も扱われますが、こちらは行政が関与する形になります。しかも工場騒音といっても、対象になるのは大きな音を出す機械や装置を備えた11種類の工場だけ。建設工事も同様で、リベット打ちや杭打ちなど、特に大きな音が発生する作業に絞られています。地方自治体の環境条例(かつての公害防止条例)も、この騒音規制法をベースにしているため、全体として規制はかなり抑制的だと言えるでしょう。つまり、経済活動を必要以上に縛らないように配慮された仕組みになっているのです。

一方で、騒音規制法に似た存在として「騒音に係る環境基準」というものがあります。名前からすると「守らなければならない基準」と思われがちですが、実際にはそうではありません。これは地域ごとの騒音環境について、行政が目標とする達成値を定めたものにすぎず、直接的に発生源を取り締まるための規定ではないのです。ただし、裁判においては受忍限度を判断する際の目安として使われることがあります。

さらに、この環境基準の評価方法も特徴的です。用いられるのは「等価騒音レベル」と呼ばれる指標で、一定の時間帯全体を平均して騒音を測る仕組みです。たとえば昼間は朝6時から夜10時までの16時間をまとめて平均値で評価します。このため、ある裁判では保育園の園児が遊ぶ時間帯には環境基準を大幅に超える騒音が出ていたものの、昼間全体でならすと基準をわずかに下回ったとして、原告の訴えが退けられた例もありました。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/8cb8c7c3da96466d615236347667d23be577d057